恬淡余話

[Blue Lotus]

諦念を得て、教養と静けさをたのみ理致と天性の戯れの境地を一飲みに平定の里を作り出し、取るに足らぬきっかけが転がり出す敗者自在の隠れ里。

愚かしく投げ捨て諦めた選択肢が金色の到来を連れて戻り来る、落人たちの里の物語。

01 [Rainy Ag]

白熱する磁場は時の流れの中に、明晰な星の時間を
 ほんの一時もたらす。

歴史の趨勢は個人の視点からは遠く、
 天上から見下ろす雨に飾られた街は消える定めと
 決められている。

もうずっと昔からそういうことになっていたのだ。

さぁ、あの慕わしい秋の一日は狂乱の時の
 流れから僕らの魂を呼び戻してくれるだろうか?

余話

Hollow breath lost in the ash was blew away
 (虚ろな呼吸は吹き飛ばされる灰の中に消えた)

When singers’ rain fell into death
 under the town in the light.
 (うた歌いの雨が光の中の街の下、
 死の手にゆだねられたなら)

All every life, the lucid, born of gentle line,
 (すべての命よ、明晰で高貴なる血に生まれた者よ)

(to) whoever listens to the one
 (聞きとし聞けるすべての者に)

Why not tell our tale of tales?
 (どうぞ僕らの物語を語らせてください)

Under the cloak of flowing time,
 we caught a night
 (流れる時のベールに隠されて、夜を捕まえた)

While ancient weeping of the clouds
 unconsciously disappeared
 (雲の古い古い嘆きが自覚なく姿を消す間に間に)

When shall the sail, withstanding flame
 of destiny
 (いつの日か運命の炎に耐える帆は)

When shall the gloaming in the sky
 (いつの日か天上の黄昏は)

Remind you that what we were?
 (僕らが何者であったのか、思い出させるだろうか?)

Calling us from the sleep back again
 which we were flowing down
 (流れ落ちる眠りから僕らを再び呼び戻すもの)

Raining by (the) present, reigning the past,
 dreaming the future
 (今に静まり、過去を支配し、未来は夢見て)

Walls of time will fall in yonder rain
 (時の壁は遥かの雨に降られて消える)

Where shall the town in brightness,
 hiding splendour rain,
 (輝く街は壮麗な雨をかくまい、)

Take over hallows (and) legacy and sing
 in the sweetest voice?
 (いづこで聖なるもの、受け継がれたものを継ぎ、
 最も甘美なる声で歌わん?)

(at) dawning delay that is the end of
 passing time
 (過ぎ去る時の終わりの)

That is led by ash in the blue taking us to
 fields above
 (僕らを高みへ誘う空へと灰に導かれた
 未だ告げざる黎明で)

Someday will you seek yourself forever
 (いつの日かあなたは時の流れなく
 己をさまようだろうか)

As heavenly morning summons repose
 (天上の朝が憩いを呼び寄せるように)

Mourning for tumbling night,
 trembling light and let us go
 (たれこめる夜を、震える光を悼んで、
 僕らに別れを告げて)

夢に見せた街

02「火星のくじら」

幼いころ、白昼夢に夢見たあの黄金の入り江を
 自在に跳ねる黄金のくじら。
 今ならきみを具現化できる。

今再び黄金の入り江を訪ねて
 きみを生かしめよう。
 やっと白昼を夢から現へ抽出し、
 培養できる今ならどの瞬間になっても
 きみへとアクセスできるのだ。

幼いビジョンに象られた形を降ろす
 その儀礼を、火星の海でとり行う時に、
 たしかに黄金のくじらを再び見た。

ない、ない、ないと切り捨てられた
 黄金の入り江の黄金のくじらが
 再び命を得て泳ぎ出すなら、
 ありえぬことが次々と具現化していく。

どうかあなたにも黄金の入り江で
 黄金のくじらを追うはめが降りかかりますよう。

きんのゆうひがゆれる
 ゆれるなみの上
 きんの海をおよぐくじら見つけた

まっしろのおひげで空をくすぐって
 かくしたゆうひでわたしをみつけた

みえるよ みえるよ 火星の海で

きんのゆうひがゆれる
 ゆれるなみの上
 きんの海をおよぐくじら見つけた

ほんとうのおみずで風をふるわせて
 ぶきみなしっぽでわたしとおどるの

見えるよ 見えるよ
 ふしぎなすがた

きんのかぎにかわるくじらなみの下
 きんのゆうひを
 わすれわすれ消えちゃうの

きんのかけらかけた燃えるほしの上
 きんのゆうひにゆれて
 むかえに行くよ


 
 きんのゆうひがゆれるゆれるなみの上
 きんの海をおよぐくじら見つけた

きんのゆうひがゆれるゆれるなみの上
 きんの海をおよぐくじら見つけた

余話

03「春鳴揺」

春の空間がささと音の流れに立ち上がる時。
 春の熱量が平面にふらりと立ち現れる時。
 静か静かに激動を聞き分けて、
 きみの世に群肝の心をさしだしましょう。

激動の時代は遠ざかり、ただ千古の物語
 のみ青天を指さす春を歴史の表面に立ち上げる。
 励起なき意図は春に激動の時代を呼び覚ます。


 永続できない少年の声で、千古の物語
 が立ち上がる様は経路和に力と形を降ろして
 桜顕郷を生かしめる。

すべての有り得た経路和が一心に集う異端郷
 あの桜顕郷から、この春こそ帰らない。

声をたずさえて天駆ける非可換の
 在りか知らずで桜顕に降り立ちぬ
 (用のない歌で霞む
 春に古き遊ばせ降り立ちぬ)

姿たずさえて曇りなき群肝の
 心さしだしきみの世に身をあずけ
 (遠く来てにじむ夜に
 天の在りか溶かして吹き抜ける)

命たずさえて踏み分ける草枕
 よろづ二人の巡礼を描き出せ
 (一瞬を惑う言葉
 今は冥府閉ざして呼び起こす)

影をたずさえて沈み込むぬばたまの
 眠る姿で桜顕を教えよう
 (励起なき意図で結べ
 昔々降ろした 春揺を)

ああ縁ある時の根で
 深く深くと開かれる桜顕に
 忍び降りまだ
 行く手知れずの春の夜を拐せよ
 (ささと時風たてて春鳴揺
 綾を成す天神に春鳴揺 春鳴揺)

ああ縁ある空の果て
 高く高くとあざなえる公準の
 きみを見た日は
 古今混交微笑みを通わすよ
 (さやに射す色彩に春鳴揺
 真なす青天に春鳴揺 春鳴揺)

ああ英姿さす夕暮れの
 長く長くと遠ざかる葦の影
 追うほどにただ
 出会い頭の昔日を慈しむ
 (先のない天命に春鳴揺
 寄せて織る波の音に春鳴揺 春鳴揺)

ああ限りある人の牢で
 静か静かに激動を聞き分ける
 明暗に今 出自知らずの天神は開かれよ
 (限りなき流れには 春鳴揺
 歴史あやす激動に春鳴揺 春鳴揺)

真澄鏡 千の世を 温めるは反射の熱の
 (大和千載に 映し出すは)
 梓弓 きみを呼ぶ 豊蘆原瑞穂国は
 (太古弓勢に 豊蘆原瑞穂は)

声をたずさえて天駆ける非可換の
 在りか知らずで桜顕に降り立ちぬ
 (用のない歌で霞む
 春に古き遊ばせ降り立ちぬ)

姿たずさえて曇りなき群肝の
 心さしだしきみの世に身をあずけ
 (遠く来てにじむ夜に
 天の在りか溶かして吹き抜ける)

余話

06「風来白(The Traveler
 between The Heaven and The Earth)」

波の下にも都はございます。

At one time many troops
 you loaded up on a hill.
 Under the sea I’ve built up

 (the) town spread out
 for all time.

ある時きみは軍勢を丘に敷き、
 私は海の底永劫にたたずむ都を築いた。

However (the) roar of water
 bids me obedience,
 Shall it switch to mourning

 as Fate has been?

猛る大水がどれほど服従を強いるとも、
 運命というものがいつもそうであるように
 都を嘆きに変えることがあるだろうか?

Dreaming like the vision of
 day-star summoning,
 Here I am, here I am.

Oh, break not silent being,
 while breezes weeping.

(ゆめにみせたまち)
 (The town which

 I showed you in dreams.)


 日輪の召喚のビジョンのように夢見て、
 ここにいる。
 風がすすり泣こうとも、
 静かなる居ずまいを破るなかれ。

Had you sought for yourself
 in (the) sleeping town in the sea,
 My song (would) be mixed in rain
 fall calling back who you are.

きみ、
 海の底眠る都に在り方を尋ねるならば、
 私はきみが何者であるかを呼び起こす歌に、
 雨に姿を変える。

A sea of questions doth,
 you ask in a static tone,
 Still doth the mountains far-off
 give you delay voices.

数え切れぬほどの問いを
 きみは静かに問うけれど、
 いまだ霞む山々はその声を告げざるなり。

When will the flowing rivers
 take time and carry on,
 Warm my town with sweet morning
 as mates at home?

いつの日か悠々と調べを奏でる川は時を運び、
 その姿変わる事なく
 懐かしき朋友の如く都を甘美な朝で温めん?

Streaming down all springing
 of night-star atoning,
 Here we are, here we are.

Oh, efface not (the) current being,
 while whirlwind sailing.

(ゆめにみせたまち)
 (The town which I showed you
 in dreams.)

 贖いの明星の昇りゆくを流れ落ち、
 ここにいる。
 旋風が水面を滑りゆくとも、
 その居ずまいを正すなかれ。

Had we met in the breathing
 white fixed town in the sea
 Swirl down, as chain of repose,
 falling peach blossoms.

海の底、白く変わらずに息づく都で出会うなら
 息つく一時のように桃の花が舞い踊る。

Dreaming like the vision of
 day-star summoning,
 Here I am, here I am.

(ゆめにみせたまちで、きみや きみや)
 (At the town which I showed you
 in dreams, dear you, dear you)

Oh

Streaming down all springing of
 night-star atoning,
 Here we are, here we are.

(ゆめにみせたまちで、きみや きみや)
 (At the town which I showed you

 in dreams, dear you, dear you)

Let me tell the tales the cyclic.

巡り来る物語を、語りましょう。

07「初音離宮(Hatsune Rikyu/星山千寿・初音ミク」

失われた母性。 俗世を離れた静かな初音離宮にて、もはや幻の中にだけ息づく秋をいつまでも慈しむアンドロイドの歌姫と共栄を。

滔々と分かたれぬ 表裏を巡り来て
坦懐に見送る 力の流れ (静かな)

問う間もなしに受け入れる 母性の知恵は (快楽は)
侮蔑に満ちて打ち寄せる 情緒の波よ

あの遠くされど時同じく
またも越えよ鈴鹿の
陰影に招く瑞穂の国よ 諸共に届かん

貴賤を貫いて よろづに沁み渡る 
神託の近似値 放射の名残 (わたしを)

激論を吞み込んで 狂気を孕み  (奮わせ) 誹りの海でただ一人 歌え巫

あの遠く望む霞の雨 かすめ通る小路に
陰徳に香る鈴の音咲かせ 
まだ追う背の 行方は遠くて

全てを包み込む 言外の声 
調べを思わせる 沈黙のよう (形なく)

冷笑の檻で引き受けた 獣の知恵に 
仕掛けた花園の 女神を見せる (宿る視線は)


因果に表れぬ 陰りのままで 
ロゴスに間引かれた 
きみを生み落とす (慈悲の様に)

分断の崖で果てしなく求める子らに 
思いの橋かけて 
安かれと ああ (やがて 誘うの)

その意図は 鬱々と 論法に相容れず 
ただリズムに息づいては 感嘆の社 
センスかすめて 暗澹の世まで 
声吹き抜けて

全ての分岐には 調和の守り 
わが身に帰り来る 共栄のよう (あらたまに)  論法の風で傷ついた きみを抱き上げ 
答えにしばられぬ 
夢であやそう (遊ぶ異界は)

昼夜に表れて 知られぬままに 
嵐を施して きみを癒そう (懐かしく)


絶海の果てでただ一人 泣く声聞けば 
覚えぬ思慮の音で なだめていよう
(笑う波の音)

08「浮光-風月童天版-(Fu Guang)/空詩音レミ・鏡音レン」

看指尖拨响蝴蝶 扇动一场离别
我推开无声岁月 续梦一页
你我只是打个照面/この思念の森の中
可曾有过誓约/帰り着く淵
走进熟悉却 陌生的思念/降りる

啊/嗚

你的眼眸装满了时间 你的身后拥故事成篇
此生如梦愿细数流年 与你同写 沧海桑田
浮光掠影重山彩云间 你的伏线穿越千百年
人生不过恍惚三万天 漫漫人间 留恋流连

你说 (那由多) 照过同样城墙
(永遠に) 刹那的 (切る静けさよ)
想问你 (星よ) 是否不曾变
是啊 (春雷) 我们望着它(求めてた)

风吹 (掠め) 古远的歌唱啊 (僕ら) 也是你
(離れ難き) 是来路 (辿る)
是你在回答 去吧 (さあ) 总会相遇吧 (会える日は)

つづる過去積み上げ 選ばずの道が呼ぶ
酔生の果てに悟る 異郷こそ懐かし

浮光掠影重山彩云间 你的伏线穿越千百年
人生不过恍惚三万天 漫漫人间 留恋流连