楽曲「月ハ今宵モ君ヲ照ラス ~寂静古道編~」余話

楽曲「月ハ今宵モ君ヲ照ラス ~寂静古道編~」余話

本稿は「月ハ今宵モ君ヲ照ラス ~寂静古道編~」の余話である。
作者本人(今回はカバーだが)の制作裏話になるので、あなたなりの曲世界解釈の「余」計な障りになる可能性がある。
そのことを予め述べた上で利他的か利己的か、曖昧なままでいざ平調音取。

今回使われている音源は和楽器、雅楽器を中心に中国民族楽器にひょうきんなシンセが舞台裏で転がり回っている。
イントロのアレンジや歌が終わった後の楽器ソロパートのフレーズは幼虫社ファンならきっと合点がいくあの曲の化粧をしている。せいぜい化かされてほしい。
ストリングスに似た音は中国民族楽器、zhong hu(中胡)だ。のちにer hu(二胡)を誘い、導く音の布石として冒頭から矢面に立っている。
また、中胡に寄り添うように佇むのは和琴。目立たないながらもしとやかな縁の下の力持ち。
サビ直前では高麗笛と互いに呼び合うことで一時として留まらぬ水に砕ける月を描く(ホントか?)
サビの後ろで、高音で櫓から月へと飛び立つ笛の音はおっとりとした尺八と無邪気さを誇り飛び上がる高麗笛だ。

KAITOがメインにすり替わる「軒端ヨリ」の裏で響く瞽女の低くしわがれた声が尾根を越えて山へと渡っていく。
軒端より覗くこの世を外れた霊体の姿。未だ見ぬ面影。覚えのない懐かしい故郷。夢で学んだ彼岸の理。

肝心のボーカルはいつものボーカロイドではなく私の声である。ボーカロイドであれば寸分たがわず間違いなく鏡音レンを使う曲世界であるが、幼虫社のあのたおやかなボーカルを真似てキーを下げた。
コーラスはKAITO V3を起用したが、余話として語るならば最初はアニムスの投影を目論み鏡音レンV4Xの予定だった。
ところが当てが外れて私とレンの声がぶつかり合い相性が良くなかったため、急きょKAITOに助け舟に乗ってもらった。
声には相性があるのだ。私の声はレンとは合わないがKAITOとはよく合う。
おそらくボーカロイドは似た声の人間とは合わず、全く違う声の方がよく響く。

そしてここまで読んでくれた人が最も気になるのは追加歌詞だろう。
KAITOに歌わせた歌詞は私の創作であり、幼虫社へのメッセージでもある。
未だ遠くで眠り続けるあなたは、この八島が目覚めた時代の黎明を説き一陣に去って行った禅師の後ろ姿だ。
私は見識らぬあなたを太古の色で染め上げた空の下、古く深い八層の屋敷に朧げに覚えている。
それは後の世で「デジャヴ」と呼ばれた。

私はこの屋敷で最高の礼を尽くして、あなたを待つ。

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