夢見るホムンクルスを先導に波切るベキ級数(アッサジと巡るJourney With Cyclops)⑫

夢見るホムンクルスを先導に波切るベキ級数(アッサジと巡るJourney With Cyclops)⑫

e^iπ=-1に思いをはせるアッサジ

‘journey with cyclops’
『世界一美しい数式「e^iπ=-1」を証明する』(2019.佐藤敏明) を読破し、数学回路を構築した脳で作曲するプロジェクト。

さて、いよいよ最後のフィールド「オイラーの等式」へと船出したわけだがどうも周りを泳いでいるのは一見してオイラーの等式に連れていってくれなさそうな生命体ばかりだ。
無限級数、無限等比数列、収束半径……と。

手元の地図を見てみるとどうやらこの先は
三角関数と指数関数のベキ級数展開→収束半径を調べて→オイラーの公式の証明→オイラーの等式を導く
といった順だ。

周囲を泳ぐ彼らは皆初対面のエイリアンたちだが無限級数にはどこか親しみやすいデジャヴを覚えた。
無限級数、特に収束する無限級数は足しても足しても一つの数に近づいていく所がまるで森羅万象の神のようだ。なぜ足し続けているのにその数を飛び越えないのか?

そこには音楽の覚えがあるようにも見える。どれほど音楽理論を外れて曲を作ろうが結局一人の人間のセンスという土壌からは出られない。
いくら聞くにおかしい破綻した曲を作ろうとしても結局は作りながら聞いて「良い」と思えるフレーズしか選べず、どうしても己という檻から出られない。「良い」と思えるフレーズをわざと選ばないにしても結局はその「選ばない」という意図は己の意図なのだ。

己を飛び越えることができないように、無限級数は無限と名乗りつつも一つの数を超えられない。その先に待っている一つの数とは己自身に眠る神かもしれない。
じゃあ発散する無限級数は何か?どことなく量子力学のキャラに似ている。古論調の示した檻を次から次へと突き崩して進んでいくたどり着けない宇宙の端のようで正直に描写するなら「わからない」という言葉を引き出すもの。

負の橋で支えたブラックホールの先に生き生きと展開する異世界のように発散する無限級数を追うものはこの世からいないことになりそうだ。

ホラーというジャンルが数学にもあるのなら発散する無限級数は間違いなくホラーのジャンルになる。
納涼に発散する無限級数はいかが?

さらに収束半径がある。これはホラーでオカルトチックな発散する無限級数(ベキ級数)の双子、収束するベキ級数が生きられる範囲のことだ。脆弱なホムンクルスである彼はその恵みをたった収束域の範囲でしか芽吹かせられない。
しかし今回はこの小さなフラスコの中の賢者はオイラーの等式への船団の先頭に立つ女神の顔をしながらも我々を雲霞む城へと導く航路の一つでしかない。

さて数学回路の話はここまでにして次はこの回路が私に及ぼしている影響についてだ。
とうとう回路が定着し始めたのか、夢に影響が出て来た。
夢が一貫するようになってきたのだ。

もともと私の見る夢は、大まかなストーリーの中で全然関係のない場面が突然始まるという脈絡のないものだった。これは普通の夢の見方だと思う。そして時々鮮やかな色付きの夢を見る。この頻度は子供のころから創作を始めるにつれて上がっている。

これが一貫するようになってきた。ストーリーがあまり飛ぶことなく最後まで進んでいくようになったのだ。そして色が付く頻度が上がった。
こういう一貫した夢を見る時は必ずと言っていい程色が付く。雪の白、ボートのオレンジ、女性の黒髪。鮮やかにはっきり見える。
特に印象的な色がオレンジだ。オレンジ色がついているものはいつも違うが、たいてい目が覚めた時に明瞭に思い出せるのはオレンジ色だ。

数学回路はオレンジ色なのだろうか?私にはどうも青に見えるが。オレンジを学科に当てはめるなら社会科に思える。

さらに朗報なことに夢の中で音楽を作ることが多くなった。作る、というよりはレム睡眠の際に曲が聞こえてくる。歌詞付きで。
どこでも聞いたことのない曲なので眠りながら作っているとしか思えないがたいてい目覚めてすぐに忘れてしまう。

今まで聞こえた曲は全てインストか、歌詞付きなら女性の声だった。インストなら笛系の音の途切れない軽く素朴な曲が多い。音が粒になる琴やピアノなんかのフレーズは聞こえたことがないのでもしかしたら睡眠の連続性が流れる笛のフレーズと呼応しているのかもしれない。

次回はまた一漕ぎ進んでオイラーの等式のための、直接に関係のあるベキ級数展開が始まる。

追記:

p.146の図3.18の「限りなくx軸に近づく」は出版先に問い合わせたところ(下のメール)やはり「限りなくy軸に近づく」の間違いだった。まあこの程度なら読み手はうっかりミスだと分かるのでそこまで誤植として気にする必要はないだろう。

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