‘journey with cyclops’
『世界一美しい数式「e^iπ=-1」を証明する』(2019.佐藤敏明) を読破し、数学回路を構築した脳で作曲するプロジェクト。
さて、ベキ級数展開からオイラーの公式に辿り着き、化城喩の船着き場に降り立った有様だがどうも釈然としない。
なんだか拍子抜けした気分だ。
それもそのはず。なぜならここまでは初めから見えていた海図の通りだからだ。証明とは初めから絵の見えているパズルだからだ。
だから完成したところで面白くない。ゴールの見えている迷路を指示の通りに進んだだけだ。
数学と音楽は先祖を共にするが、きっと数学の証明の「言われた通りに地図に従うこと」に飽きたアナーキーどもが音楽へと走ったに違いない。
それでも一つ、数学の求道物語を実際にこの身を以て辿らなければ見ることのなかった景色を見た。
複素数の荒野だ。
指数関数、三角関数、ベキ級数とまとわりつく妖どもを引きずりつつ複素数の荒野に倒れてこの旅路を振り返った時、迷いに迷って潜り抜けてきた三角関数の湿原、指数対数のジャングル、微積の霧の平原は連なりあって脈々とただ一列の軌道を描いていた。
e^iπ=-1と。
次回が最終回だ。