公式は数学の短歌である(アッサジと巡るJourney With Cyclops)⑮(最終回)

公式は数学の短歌である(アッサジと巡るJourney With Cyclops)⑮(最終回)

‘journey with cyclops’
『世界一美しい数式「e^iπ=-1」を証明する』(2019.佐藤敏明) を読破し、数学回路を構築した脳で作曲するプロジェクト。

オイラーの化城喩へ入城した。
荒廃した城跡から宇宙を見上げるとそこにはただ一言、言離の神そのものが刻まれた空間があった。

「1を180°回転させると-1」。

たったこれだけの話だったのだ。たったこれだけを言いたいがために全246ページの本が書かれ、私はアッサジと同行二人に三角関数の湿原を抜け、指数対数のジャングルを密やかに歩き、微積の霧の平原を駆け、オイラーの等式霞む砂浜に降り立ち、その化城喩へと漕ぎ出だしたのだ。

この本の内容をいずれすべて忘れることになっても、これだけは覚えているだろう。
数学の公式の暗記はこの246ページの手間を省くためなのだ。

そしてすべての数学の公式がこれだけの重みと厚みを持つとしたら数学の歴史的功績は無量のほどもある。

さあ数学そのものの話はこれくらいにして、それではこの一冊で私の数学回路はどれほど構築され定着したのかを音楽方面から語ろう。

今の作曲状況としては仮題’tiger’の作詞作曲が終わり、mix手前だ。
私は作曲→作詞の順で作っていくので主に作詞の面を取り上げると、以前文章構築回路と数学回路は同期しないと書いたがそれはおそらく違う。
数学回路が文章構築回路に侵入し、語彙の選択方法が再構築されているのだ。
特に公式の証明の在り方、長々と順序立てて語ったものをただ一つの公式という数の熟語に落とし込む言葉遣いは今回の’tiger’の作詞にはよく出ている。
元々学術系の作曲者として堅い熟語や漢語を使いがちな傾向はあったが今回は抽象的な概念をただ二語の熟語に落とし込んだ言葉遣いがさらに増えている。

今回の「世界一美しい数式~」のメインテーマであり、最も印象的で時間をかけたのは公式の証明だったが数学の証明とは和歌なのだ。
その短い言葉の裏には無量の時間をかけた論理的構築が存在するがそれをおくびにも出さずにシンプルな型に落とし込む美しさ。

今、私はなぜe^iπ=-1は美しいのか腑に落ちた。
それは数の和歌だから。


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