雅楽器×東アジア民族楽曲「霊魂帳/Chitose_H&鏡音リン/KAITO」に寄する余話

雅楽器×東アジア民族楽曲「霊魂帳/Chitose_H&鏡音リン/KAITO」に寄する余話

雅楽器×東アジア民族楽曲「霊魂帳/Chitose_H&鏡音リン/KAITO」に寄する余話


10月半ばに投稿した仮想ネットワークアルバム「複素録」に属する「霊魂帳(Mitamachou)」の余話を。

ボーイソプラノではなく自分で歌うまでのいきさつ

毎年8月には仮想ネットワークアルバム「童子物」に属する曲を一曲あげることにしている。
が、今年は「霊魂帳」は「童子物」ではなく「複素録」という別のアルバムに属することになった。
(仮想ネットワークアルバムについてはあちこちで説明しているがもう一度簡単におさらいしておくと、youtubeの再生リストを音楽アルバムの様に使い、次々と曲が追加されていくオンライン上の更新型音楽アルバムのことだ。一つの再生リストが一アルバムであり、同じ世界観を有する。「童子物」と「複素録」は一見似たような和風楽曲アルバムだが実は異なるストーリー。)

そもそも「童子物」と「複素録」の違いは細かくあるがそれは曲から聞き手に感じ取ってもらうべきであり、作者がごちゃごちゃ言葉で説明するべきではないと感じるためここでは事細かに説明しないが、一つ明確な違いは「童子物」はシンガーをAIや子供の声を元にした合成音声ボーカルを含めて大人の演ずる子供ではなくリアルな子供でなくてはならない、というものだ。(鏡音レンとかちょっと微妙だけど)

例年通りこの曲「霊魂帳」も「童子物」に属するべく8月完成を目指して楽曲を書き終え、めぼしい少年シンガーに歌唱をお願いしようと連絡をとった。
だが、曲が難しすぎたためあえなく断念。言葉が多少古めかしく馴染みがないという点は歌の歌詞である以上なんとでもなるものの、メロディが難しく歌唱できないと返答をいただくこととなった。

で、どうする?
手元には鏡音レンもいるし、AIシンガー空詩音レミならリアルボーイソプラノ×AI学習された大人の歌い方でなんなくクリアだ。

だが今回は自分で歌うことにした。

なぜならボカロやAIシンガー界隈と言うのはどうしてもアニメや二次元のイメージと深く結びついており、「世界すべての音楽を聴く人」には届かないと常々感じて来たからだ。
つまりウケる曲調やMVというのがある程度決まっており、その枠の中の勝負ではこういう古めかしいような渋いような曲調は不利だ。

今回はこれから自分の声を使っていく良いチャンスだと思い、自分で歌うことにした。
だが、録音スタジオに入ってから気づいた。
こういうバラードのようなゆっくりとした曲というのは実力がもろに出るのだということを。
おまけに歌唱にグリーンダカラを持って行ったところ声にやたら金属的なノイズが乗る。
え?スポーツドリンクには声をキンキンにする能力でもあるの???

スタジオで録音中、低音にKAITOを入れることを思いついた。
自分でも出せる音域の低音ではあったものの、どうしても無感情で無機質な低音になりがちだったためここは神の役としてKAITOを起用。
元からコーラスには鏡音リンを使っていたため奇しくも夏の終わりに投稿した「古調天涯」を思わせるようなつながりとなった。

これは所属アルバムを「童子物」から「複素録」に変更したからこそ出て来たアイディアかもしれない。
人間万事塞翁が馬。馬上の生はどんな角度で跳ね回るか最後まで分からない。

「霊魂帳」楽曲制作における余話(裏話)

この曲は言葉から広げたタイプだ。
一番最初に「古調の世界に生まれ来て」というフレーズを思いついた。
それが全ての始まりであり、そこから楽曲に入れられるフリー音源を探しにBoothへ行き、storia氏の「たそがれのみち」より「かんざし」を切ったり貼ったりひっくり返したりのパッチワークサンプリングしてイントロを作った。

最も民族調(東アジア風)の特徴が出ているのがパーカッション音源で、朝鮮半島からはソゴ(小太鼓)、中国からはBangu, Xiao Tanggu, 日本からは釣太鼓、鉦鼓、神楽鈴の雅楽器がメインで参戦しつつ、メロディ楽器には中国から笛子、洞簫、日本からは尺八と箏が参加。
おおむねいつも通り雅楽器をメインに東アジア出身の楽器が集結している。朝鮮半島の楽器があまりないのもいつも通り。
これからは朝鮮半島の楽器も生かしていきたい。

和風の不思議な楽曲なのにチェンバロが入っているのはひとえにstoria氏のセンスのおかげだ。
私はチェンバロといえば少女漫画的ベルサイユだの社交界だの煌びやかな世界にどうしてもイメージが寄ってしまうのでstoria氏の、あえて和風楽曲にチェンバロを入れるアイディアには感服する。
他の和・雅楽器と合わせても浮かないどころか和風の怪しげな妖で活気づく夜市のようなイメージを掻き立てるのに一役買っている。

サムネ含めて動画に使用した画像はほとんどCabinet of Curiosities氏の「極楽」と「境内」から。
まさに神仏習合の素材でほとんど他の人の素材を使わずにこういう和風不思議系の楽曲にふさわしい妖しの世界を創れてしまった。

https://kanshinoheya.booth.pm/items/5744823



ちなみにボーイソプラノ音源(空詩音レミAIか鏡音レン)でのセルフカバーは今のところ検討中。
Mixとマスタリングをオーダーした際におまけでカラオケ音源ももらったためできないことはない。
2Mix(カラオケとボーカルを合わせること)さえ自分でやればアップできるので時間を見つけてカバーを創ることを検討中。
そろそろ空詩音レミの楽曲を紹介する際にAlice in Quantumlandばかり持ち出すことにリスナーの皆さんも飽きて来ただろう。
私も飽きてきた。

実はミキサーに渡すためのラフMixでは空詩音レミを仮歌につかっているので雑なMixのものなら手元にあり、だいたいどういうイメージになるかはわかっている。
オケさえ差し替えればすぐにでも出せる状態だが本格的に作品にするとなればもう少し調声を見直したいので今すぐには出せない、ということで気長にお待ちいただければ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA