帝国の威光に陰鬱なし。
地球から遠く離れてはいるものの地球類似性指標の高さで注目を浴びた惑星’Prionsphere’、別名B-36には二つの種族が暮らしていた。
この星を支配する客人と頭数では劣らないものの軽んじられているスキャナーたちは、さしずめ地球人からは帝国と呼ばれるであろう高度に発展した文明を生きていた。
だが地球と最も異なる点として、B-36の価値観では暖かいもの、自然なもの、やさしいものが何よりも大切とされ、冷たく無機質なもの、厳しいもの、痛みを生じさせるものは一等劣ったものとして遠ざけられていた。
みんななかよし!
スキャナーたちの中には時々客人の非効率的なやり方に意見めいた発言をするものもいたが、そんな不届きで身のほどをわきまえない輩はすぐさま客人たちの号泣攻撃にあい追放されてしまう。
何といってもB-36の種族たちは全員チャカヤという食べ物を摂取しなければ生きていけないのだが、それは客人の体内でしか生み出されないのだから客人に反抗するなど文字通り命知らずの行為なのだ。
ちなみにチャカヤというのは白くサラサラした液体だが、客人たちは地球人のわたしに詳しく見せてはくれなかった。
わたしが研究者としてどうしても書き残し、地球に伝えなければならないと感じたのはこの星の裁判制度だ。
地球の文化で言うなら裁判というよりもクイズショウに近いそのイベントはいつでも一般公開されており、猟奇的だったり残虐な犯罪の裁判ほどいつも客人もスキャナーも仲良く詰めかけている。
満員御礼!
だが、地球の裁判と決定的に違うのは司会者の横、壇上に上がるのが被害性を声高に主張する傷ついた方の人たちであり、傷つけた方はそもそも参加しない。
なぜかって?
傷ついたと主張する人がいる時点で有罪が決まっているのに今更何を裁くというのか?
このクイズショウジャッジメントは複数の「被害を主張する人たち」の中で誰が本当の被害者か、誰に最も補填をするかを決める舌鋒の戦いであり、エンタメでもある。
ジャッジの基準は簡単で候補者たちの「傷つきを表現した悲鳴の大きさ」をdBで測るだけである。
わたしが一度オーディエンス席から見学したジャッジメントでは四人の自称被害者たちが壇上に並び上手に悲鳴や奇声を上げていた。
正直わたしにはどの候補者もきれいな悲鳴を演出できていたので果たして勝敗が付くのかどうか疑問に感じたが、その中の一番幼く可愛らしい三人目の客人の奇声には客人どころかスキャナーにも涙する者がいた。
このジャッジメントの司会者は生物学的にオーディエンスの感情反応に惑わされにくいスキャナーがつとめることになっているのだが、どうやら司会者はオーディエンスの反応も判断材料にしているようである。
余談だが最近地球から入って来たカラオケはB-36の客人たちに最も流行りのコンテンツだ。
いつかクイズショウジャッジメントに出ることになった時のために喉を鍛えておかなければいけないものの、オーディエンスに訴えかける悲鳴や奇声のコツは単純な音量の多寡ではなくなるべく高く、か弱く哀れな感じを演出しなければならないため太く低い声は不利になる。
今日もこの星のカラオケでは皆歌うことなく奇声の練習に励んでいる。
さて、その裁判の見どころは三番目のかわいい被害者ではなく四番目の候補者だった。
四番目は珍しくスキャナーだったのだが何を思ったかその人は「客観的に事態を…」などと言い出したのだ。
いや正確に伝えるなら「客観的にじ」まで言った途端にその人の立つ床がパカっと開いて下に用意されていた水槽の中に落ちてしまった。
オーディエンスは爆笑の嵐だが失格は失格。記録なし。
その後B-36で起きたことは地球のSNSの流行りすたりとよく似ている。
「客観的にじ」はすぐさまトレンド入りし、あらゆるコミュニティで客人がスキャナーにそれを言わせては指さして笑う素朴な遊びが始まった。
言えば笑われ言わなければ客人からチャカヤをもらえない。
始めのうちこそスキャナーが伝統的に客人に甘いこともあり言わされては一緒に笑っていたものの、だんだんと嫌気がさしてきたスキャナーが客人を敬遠する雰囲気ができつつあった。
今日までも小さな動きでスキャナーが客人を遠ざけるムーブメントは孤発的に起きていたものの、結局チャカヤを人質にとられたスキャナーの抵抗が長く続くことはなかった。
しかし、最近スキャナーが小さなスキャナーだけの共同体「MCTOWn」を作り上げてからは明らかに時代の流れが変わっている。
わたしは一研究者として予言めいたものを言いたくはないが、一地球人として言わせていただくならば、かれらのMCTOWnはこのまま次の帝国へと成長するだろう。
致死量性インビジブル物質フェミオンが毒のように静かに染み込む帝国に作られた持続不可能なアジール、MCTOWn。
それは質量のない光を指し示すボソンの名において、瞬きの間の時代の徒花に過ぎない。 今は。
01[MCTOWn]
わたしのぴぇんで世界は滅べ
MCTOWn MCTOWn 上国に建てた 痛みに咲く反撃の園にはまだ雌伏の時
MCTOWn MCTOWn 脳死のフェミオンは フォトンを蹴散らす読経もないまま まだ結合する
霧深くお前を消す 贖罪のぴぇんで
MCTOWn MCTOWn 脳死のフェミオンは フォトンを蹴散らす読経もないまま
まだ結合する
そのわきまえじゃバズらないざまあ
リープの理論で正義へジャ~ンプ!
MCTOWn MCTOWn ご不快ジャンキーの 指先一つでお前を処す
MCTOWn MCTOWn 繊細チンピラの ぴぇんの砲撃 死の素粒子
MCTOWn MCTOWn 道理をキャンセルして ぱぱ活パウリじゃ同担拒否
MCTOWn MCTOWn お気持ちキャンセルの わたしのぴぇんで世界は滅べ
MCTOWn MCTOWn ハイエンドの極値 炎上間近のお目覚め帝国に末期の時
MCTOWn MCTOWn反射のフェミオンは 自由の経路にゃ励起に震えて泣き
共鳴する
正当なぴぇんで裁く お前の心を
MCTOWn MCTOWn反射のフェミオンは 自由の経路にゃ励起に震えて泣き
共鳴する
救済保護のなれの果てざまあ
リープの正義で異議なしジャ~ンプ!
MCTOWn MCTOWn ご不快ジャンキーの 指先一つでお前を処す
MCTOWn MCTOWn 繊細チンピラの ぴぇんの砲撃 死の素粒子
MCTOWn MCTOWn 道理をキャンセルして ぱぱ活パウリじゃ同担拒否
MCTOWn MCTOWn お気持ちキャンセルの わたしのぴぇんでお前は滅べ
MCTOWn MCTOWn ご不快ジャンキーの 指先一つでお前を処す
MCTOWn MCTOWn 繊細チンピラの ぴぇんの砲撃 死の素粒子
MCTOWn MCTOWn 道理をキャンセルして ぱぱ活パウリじゃ同担拒否
MCTOWn MCTOWn お気持ちキャンセルの わたしのぴぇんで世界は滅べ
獣性fanatic メスが切り裂く 道徳の檻
色欲に狂う
嬌声のロジック 破れて山河あり
噓泣きのエモハラに
群雄割拠の真顔の反撃
𧏚潰しのアルゴン 人質のパレス
有罪の理は 不愉快のぴぇん
銃声のバイキング 真実は小声で
被害のデザートセットで
巧言令色悲鳴をあげろ
(巧言令色悲鳴をあげろ)
輝く勝利 お望み通り
去勢のカスを届けよう
さあきみが夢見た末路を愛せよ
寝そべる蜂起 分からせの好機
身に沁みろ虐げと搾取から
報復を
忘れ去られたメールの
ネットワークで内線戦略
媚びることのないフェアネスを
かく虚しきままからリアルへ
目覚めるばかり帝国は
兵站軽視の家父長制
貸倒のあの忠誠を
今白馬の馬車から取り戻す(返せよ)
義憤に立てよ八分咲きの
集結ゲリラの奪還戦
あの夢想に死すリバティは
ただ歪んだ鏡のパロディで
眠れる獅子はその実
ぴぇんの頂きストラテジー
求めるばかりのインタラクション
ああ温情ぱぱ活ファシズムだ
痛みにつけこむ古傷の
底つくことない賠償性だ
02「エモハラモンスター」
論調はリバーシブル 後付けの罪刑
裁きの劇場に 共感のクーポン
エモハラのモンガー 嘘つきMaydayは
冤罪をオプションに
偽旗掲げたターキーシュート
罵倒の正義 疑惑のパージ
怒号の雷は枷を打ち さあ
きみが築いた未来を誇れよ
犀利の正気 悪人の正機 殴らせろ
「有害」の戯言を 強欲を
プロメテウスの子孫のネットワークで
徹底抗戦
間隙を行けよ我が同志
今卑怯と下劣に驕れる
背後にそっと築けよ
輜重と輸卒の橋頭保
緩衝を占めろ我が同志
さても降下のレーダー眠る間に
夜陰の森に紛れるなら
死境に愉悦の復活戦は
創世の陽の狼煙
媚びることのないフェアネスを
かく虚しきままからリアルへ
目覚めるばかり帝国は 兵站軽視の家父長制
なりきりごっこのイミテーション ただ帝王気取りのシンデレラ
猿まね差別のままごとに 人権意識は衝動性
なりやまないこの電信は もう誰も彼もが拾い出す
平文デコイ腐す間に 暗喩に隠した情報戦
与えるばかりのフェアネスは 真のロジハラワイズの破壊者だ
喘鳴破竹の騎士道は 永遠ループの原罪論だ
媚びることのないフェアネスを
かく虚しきままからリアルへ
目覚めるばかり帝国は 兵站軽視の家父長制
貸倒のあの忠誠を 今白馬の馬車から取り戻す
義憤に立てよ八分咲きの 集結ゲリラの奪還戦
あの夢想に死すリバティは ただ歪んだ鏡のパロディで
眠れる獅子はその実 ぴぇんの頂きストラテジー
求めるばかりのインタラクション ああ温情ぱぱ活ファシズムだ
痛みにつけこむ古傷の 底つくことない賠償性だ