プロセカを知らないボカロPのためのプロセカ分析

プロセカを知らないボカロPのためのプロセカ分析

ボカロを使うにあたって避けては通れないのがプロセカ。
2019年にリリースされたリズムゲーで、あっという間にボカロカルチャーを塗り替えた、ボカロの生みの親会社も名を連ねるクリプトンボカロの公式。
ボカロを使う以上、プロセカに対してどのような意見を持っているかは関係なく、これに関しては知っておかなければならない。
なぜならもし貴方がボカロユーザーで、たとえ「自分の曲はプロセカとは関係ない」と主張しようとも聞く方には関係ないからだ。


後に述べるがボカロのファン層は2013年ごろのデータではあるが圧倒的に若年女性が多く、プロセカファン層も同様であることからして最も大きなファン層「若年女性」はボカロを聞く際にプロセカと重ねて聞く傾向があってもおかしくはない。(最近のデータが欲しいところではあるが、2013年当時に10代なら今は20代。ちょうど後に述べる大きなプロセカファン層の一つだ)
プロセカで人気のある楽曲はそのままボカロ人気曲と言い換えても良い。

出典:RBBToday (https://www.rbbtoday.com/article/2013/02/26/103633.html)

つまり、プロセカでウケやすい曲を書かない/書けないということはボカロの最も大きなファン層を取りこまないという行為なのだ。
貴方にクリエイターとしての信念があって、それでもかまわないなら気にすることはないだろう。
だが、この先ボカロでやっていこうか迷っている人には読んで損はない記事のはずだ。

本稿ではプロセカとは何か、からプロセカの購買層、ボカロとプロセカの関係からどのような楽曲を製作するべきかをデータに基づいて論じていく。


①プロセカとは何か?プロセカ=ボカロの風潮

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00640/00005

プロセカとはボカロ初音ミクを中心としたアイドル要素強めのリズムゲーである。ボカロ以外のキャラもいるが今回はあくまでボカロPのための記事なので他のオリキャラはざっとだけ。
(太字は記事引用)

>> 『プロセカ』にはアドベンチャーゲームの要素もあり、5つのユニットに所属するキャラクターたちの物語が描かれる。メインで登場するオリジナルキャラクターたちはすべて高校生で、彼らの等身大の悩みや葛藤がストーリー形式で展開する。キャラや物語の魅力も10代の共感を呼んでいる大きな要素であり、ストーリーと音楽がリンクすることで両者の魅力を高める相乗効果を生んでいる。

後のプロセカファン層の話ともつながって来るがこの「10代向けの10代の気持ちを歌ったJ-Pop」がプロセカを一言で表すならぴったりの言葉だろう。

>>「前向きな未来を見たい」みたいな話は感覚的にあると思います。どのユニットもいろいろな苦労をしていて、過程は過酷ですが、あきらめなければいつか、と未来に向かっている。「より良い未来に行きたいよな、みんな」という感覚は、『プロセカ』の共通点ではないかと思います。

逆に言えば10代向けの「頑張れば明るい未来が待ってるよ」的な王道J-Popを書けなければもうボカロは聞いてもらえない、ということだ。
なぜならとっくにプロセカ=ボカロの構図が出来上がっているからだ。
それが証拠に上記のリンク記事内佐々木氏の

>>最近、音楽業界の人たちから「ボカロ発の音楽を上手くまとめている『プロセカ』に注目している」と言ってもらえていると聞きます。

という言葉が全てを物語っており、プロセカオフィシャルサイトに名を連ねる企業の一つにボカロの生産元クリプトンの名が入っていることもボカロ=プロセカの文化を証明している。
冒頭に述べたようにボカロファン層とプロセカファン層はきれいにかぶっている。
つまり、プロセカ=ボカロ=アイドルの構図の出来上がりだ。
むしろアイドルでないボカロはもう存在できないと言える。この辺はボカロから消えた民族調や和風楽曲に関して後に書く。

リズムゲーとして面白い曲を書けること(低音kick強めのドンシャリ系)、ボカロをアイドルとして演出できること

この二つがボカロ公式の出した正解のあり方であり、このあり方に乗らない限りボカロでウケることはもう難しいと言える。

ちなみにプロセカ=ボカロと言えるか?のデータに関しては「プロセカに採用された楽曲を製作したPの曲がボカコレランキングに入っているか」で見てみよう。
上位10曲のPの内ボカコレ運営側1人、ランキング入り4人、不明が4人。

あまり参考にはならないもののボカコレ運営側がプロセカに嚙んでいるならつまりそういうことだ。

②プロセカファン層

出典:4Gamer.net

出典:PickUPs!

上記二つのデータから読み解くならば、プロセカは若い女性向けだ。つまりボカロ自体が女性向けの面が強いともいえる。
しかも興味深いことに男性ファンはリリースから時間が経つと離脱する傾向にある。
これはおそらくコンテンツが女性向け要素強めになっていくにつれて男性への集客力を失い、現在の女性向けカルチャーの勢いも相まってどんどん女性向けへと推移していくためと推測できる。
つまり若年層でも主に女性をターゲットにした曲を書くべきである。

③プロセカで人気のボカロ

次にプロセカの上位20位までの人気楽曲で使われているボカロのデータを集計しよう。
(デュエット曲やボカロ以外の楽曲も存在するため総票数は20でない)

https://ranking.net/rankings/best-proseka-songs?page=2

果たしてこんなものを図にする必要があったかどうかはさておき、初音ミクが一強なのもさておき、20曲ざっと聞いて受けた印象としては

プロセカは女性向けではあるがイケメンキャラよりは女の子の方がウケが良い
その意味でもアイドル要素強め
そしてもちろんEDM要素の盛り込まれたドンシャリ系

ということ。
そもそもプロセカオリキャラでも圧倒的に女の子キャラの方が多い。
つまり腐女子向けと言うよりはオタク女性層をターゲットにした商品といえる。
一応イラスト方面で調べると鏡音レン×KAITO、KAITO×オリキャラのBLも存在しなくはないが一般ボカロPが楽曲制作にあたって真似できるものではないので言及しない。

④ボカロPの性別

これ関係あるのか?という意見もあるだろうがファン層のほとんどが女性であることを踏まえ、かつパフォーマーの内面や性格を重視する現在の風潮からして無視はできない。
(製作者が同じ曲が多数存在するため総数10でない)

男性Pが6人、不明が2人、女性は0。
これはそもそものボカロPの性別比率が男性に多いのか、女性の曲は採用されづらいのかはボカロP全体の性別比率が不明なため何とも言えない。
が、戦略は見えてくる。貴方が女性の場合男性のフリをするか性別は隠した方が良い。

以上をまとめると、ボカロでウケるためにはどうすればよいかの答えが見えてくる。

①男性に生まれ(もしくは性別を隠すか男性のフリをし)、②初音ミクを使用し、③低音kick強めのEDMっぽい曲調で、④若年女性が好きそうなキラキラした楽曲を、⑤アイドルっぽい演出で生産できること(MV含む)

が導かれる最短距離の王道にして正解だ。もちろん見た目も良い方がいいに決まっている。

何だかこの結論だけ見るとホストごっこのようである。
プロセカファン層を取り込むことはもはや「プロセカファンにウケること」ではない。「ボカロで生き残るための戦略」だ。
作り手側がどう考えようと最も大きなリスナー層にはプロセカ=ボカロの構図が出来上がっており、その中で解釈される。

貴方がボカロを使う以上この点は留意しなければならない。
貴方がプロセカをどう思おうと関係ない。

プロセカがボカロの正解だ。

余談だが私がたまに出してきた人間×ボカロの楽曲がなぜ他の曲より伸びるのかが今回解明した。
プロセカのオリキャラ×ボカロの構図と偶然同じだったからだ。

⑤ボカロ民族調は消えたのか

昨今すっかり話題に上らなくなったジャンルの一つにボカロ民族調がある。
今まで述べて来たことを考えればなぜ民族調ジャンルがウケなくなったかはよくわかる。
アイドル要素がなくEDMっぽいドンシャリ系でもないからだ。
リズムゲーとハマるとも思えない。

「プロセカの影響でボカロ民族調は消えたか?」の命題を証明するためにデータを集めてみる。
2024年7月現在ニコニコがサイバー攻撃を受けており、使用不可能なため以降は後に追記する。

個人的に売れている初音ミク以外のボカロ、可不などを使えば民族調や和風楽曲でもウケるのかどうか気になるところだ。

これはまだ何のデータもないが、「プロセカという公式からボカロの正解が出されたために多様性が多数決へすり替わった」という感覚を覚える。
民族調、和風楽曲を含むあらゆる多様なジャンルが「アイドル10代女子にウケやすい感じ」というわかりやすくきらびやかで手っ取り早いマジョリティへ収斂したという感覚だ。

資本主義があらゆるものをカネに収斂させるように、ボカロはアイドルへと収斂したのだ。

⑥ボカロでなくても良いのでは?

ボカロユーザーがボカロを使う理由はなんだろうか。
買い切りで安価だから?人間歌手に依頼するには予算も手間もかかるから?最初から知名度の高い紅白出場経験のある「初音ミク」という歌手を使えるから?
どんなジャンルでも歌ってくれるから?

それは全て過去の話だ。安さで選ぶならフリーで使えるUTAUやAIシンガーが存在する。
人間歌手に依頼するならアウトソーシングサイトから探せば今や音大出身声楽家にさえ素人が依頼できる。
知名度は確かにそんじょそこらの人間歌手では初音ミクに及ばないだろうが、それもウケるジャンルが固定されてしまった今となっては何の意味もない話だ。

散々述べたように初音ミクでウケるためにはウケるジャンルを書くしかない。
無理にプロセカから離れたウケないジャンルで初音ミクを使い、ボカロリスナーにマーケティングしていくよりは人間歌手(もしくは人間歌手に限りなく近いAIシンガー)を使ってボカロを聞かない層に聞いてもらう方がまだ可能性があるように思える。

ボカロが好きでも自分の楽曲でボカロを使うかどうかは切り分けて考えた方が得策だ。
ブルーオーシャンの開拓は海でやるべきであり、湖でやっても意味がない。

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